視線の行方について


 会期終了間際に、岩手県立美術館の「華麗な近代美人画の世界展」を見た。





培広庵というコレクターの方の収集した

大正時代から昭和初期にかけて描かれた日本画に見られるような、どこか憂愁を含んだデカダンスな傾向を持った魅惑的な作品群


と紹介文にあったので、甲斐庄楠音の見たことない作品があるかなと期待していたのだが、うーん、あるにはあったけど小品が数点。デカダンスな傾向は思ったほどではなく、全体的に上品で「趣味のいい」感じ。


ただ、総勢100人以上は居たと思われる美人さん達は総じて視線が上下右左とあちこち宙に浮いていて、こちら側を見据える人はいない。


若桑みどりが何かの本の中で、鑑賞者側と絵画の中の女性が決して視線が合わないような構図は、鑑賞者が安心して女性の体を覗き見できるようにするための装置である(女性は見られていることに永遠に気がつかない、ということ)みたいなことを書いていて、それを考えると、身を捩りながら、明後日の方角ばかりを向いている女性群に囲まれている状況というのは、それほど「趣味のいい」感じでもないのかな、とか。


画像は美術館の入り口付近を携帯カメラで撮影したもの。映画「アルファヴィル」ってこんな雰囲気なのだろうか?と思いながら。見たことはないのだけれど。